数年前、ロンドンのオープンオーディションでのこと。制服のブレザー姿のままの17歳の女の子が、列に並ぶ全員が心の中で思っていたことをブッカーに尋ねました。「私、本当にモデルになれると思いますか?」ブッカーが彼女を見ていたのは、せいぜい4秒ほど。横を向くよう促し、ドアまで歩いて戻ってくるように言いました。審査はそれだけでした。
自分はモデルになれるのかという問いに正直に答えるなら、自分ひとりで確実に知る方法はありません。決めるのは事務所で、その答えは「会いたい」と言われるかどうかでわかります。とはいえ、応募する前に自分で確かめられるサインは確かにあります。飾り気のない、むしろ不利な光の中でも顔の印象が崩れないか。身長やプロポーションが、少なくとも一つのジャンルに合っているか。フィルターなしでも自分らしく見えるか。知らない人にじっと見られても、落ち着いて立っていられるか。このほとんどに当てはまるなら、次の一歩は手軽でお金もかかりません。シンプルな写真を撮って、いくつかの事務所に見てもらうことです。
ブッカーはその4秒で何を見ているのか?
「かわいい」かどうかではありません。少なくとも、友だちが言うような意味では。ブッカーが読み取っているのは、あなたの顔と体がカメラの前で、硬いスタジオライトの下で、自分では選んでいない服を着たときにどう見えるか、ということ。そして同時に、すでに似たタイプのモデルを抱えていないか、とも考えています。
頭の中ではおおよそこんなことを見ています。
- 骨格。 頬骨、フェイスライン、目と目の間隔、横からの光をどう受けるか。カフェで向かい合うとごく普通に見える顔が、写真では目を奪うほど印象的になることがあります。もちろん、その逆も。
- プロポーション。 胴に対する脚の長さ、あごのラインを引き立てる首、ジャケットをきれいに着こなせる肩。身長が重視される部門もありますが、プロポーションはほぼすべての部門で重視されます。
- 肌、髪、歯のありのままの状態。 完璧を求めている人はいません。火曜の朝8時、フォトグラファーが実際に向き合う素材を見たいのです。
- あなただけの何か。 すきっ歯、濃い眉、そばかす、少し曲がって治った鼻。キャスティングはこうした個性にずっと寛容になり、特徴的なパーツはマイナスよりプラスに働くことが多くなっています。
- 存在感。 カメラを見ているのか、カメラの向こうを見通しているのか。そわそわせずにじっとしていられるか。
さらに詳しく知りたい方は、モデル事務所が見ているポイントのガイドで部門ごとに解説しています。
モデルは背が高くないとだめ?
仕事によってはイエス。でも、ほとんどの仕事ではノーです。
ニューヨーク、ミラノ、ロンドン、東京のハイファッションやランウェイ部門は、求める範囲が狭い傾向にあります。女性なら約173〜183cm、男性なら約180〜190cmを目安にするところが多いものの、基準は事務所ごとに異なり、例外的に契約されるモデルも毎シーズンいます。ランウェイのサンプル服は決まったサイズで作られているため、これは美的な基準というより実務上の制約です。
ランウェイ以外になると、門戸は一気に広がります。広告、EC、カタログ、ライフスタイル系キャンペーンなど、報酬が発生する仕事の大部分を占めるコマーシャルモデルで大切なのは、リアルで親しみやすく見えること。コマーシャル部門では、あらゆる身長、さまざまなサイズ、50代、60代、それ以上の年齢の人まで契約しています。カーヴィー/プラスサイズ部門、フィットネス部門、市場によってはプチ部門もあり、手や足で稼ぐパーツモデルもいます。自分がどこに合うかわからないなら、モデルの種類の解説を10分ほど読んでみる価値はあります。
つまり、本当に役立つ問いは「モデルになれるか」ではなく「どんなモデルになれるか」。温かく自然な笑顔の163cm・34歳と、シャープな頬骨の180cm・17歳。どちらも十分可能性があります。ただ、紹介されるクライアントがまったく違うだけです。
ブッカーが考えているのは、あなたが美しいかどうかではない。今シーズン、誰かにあなたを売り込めるかどうかだ。
思ったほど当てにならないサインは?
周りからかけられる励ましの多くは、優しくて本心からのものですが、あまり判断材料にはなりません。
- 友だちや家族に「モデルになれば」と言われる。 うれしい言葉ですが、たいていはあなたが好かれているという意味です。
- フォロワーが多い。 コマーシャルやブランドの仕事では役立つこともありますが、事務所がまず契約するのは顔と体です。フォロワー数百人、非公開アカウントのまま所属する新人もたくさんいます。
- 自撮りでは最高に見える。 インカメラ、決め角度、いつもそばに立つライト、オンにしたまま忘れているフィルター。事務所に送る写真では、そのすべてがはぎ取られます。
- 知らない人に「スカウト」された。 本物のスカウトは実在します。フェスで、路上で、Instagramで。一方、ショッピングモールで10代に声をかけて撮影パッケージを売りつける人もいます。次のステップで何かにお金を払うよう言われたら、それはモデルになれるサインではなく、誰かがお客を見つけたというサインです。よくある手口は正規のモデル事務所と詐欺の見分け方のガイドでまとめています。
自宅で自分を試す方法は?
自分ひとりでブッカーの目に一番近づける方法が、デジタル(宣材用の素の写真)を撮ること。今のありのままの姿を、加工なしで写したシンプルな写真です。所要時間は20分ほど、費用はかかりません。
- 1光を探す。 午前の中ごろ、窓に向かって立ち、背景は明るい無地の壁に。天井の照明やリングライトは使いません。
- 2シンプルな服装で。 体にフィットした白か黒のタンクトップやTシャツ、黒のスキニージーンズかフィットしたショートパンツ、裸足かシンプルなフラットシューズ。水着の写真を求められることもありますが必須ではなく、18歳未満の人は必ず保護者の立ち会いのもとで撮影してください。
- 3素のままで。 ノーメイクかほぼすっぴん、髪は顔にかからないようまとめ、アクセサリーなし、フィルターなし、レタッチなし。
- 4誰かに手伝ってもらう。 背面カメラを胸の高さで構えて撮ってもらいましょう。顔のアップ、左右の横顔、斜め45度、全身の正面と横向き。
- 51日おいてから見る。 完璧に写っているかではなく、自分らしく見えるか、何も盛っていない状態でも顔に惹きつけるものがあるかを確かめます。
詳しい手順はモデルのデジタルとは?撮り方ガイドで紹介しています。
それでも、自分を判断するのは自分自身。ほとんどの人は厳しすぎるか、甘すぎるかのどちらかです。本当の試金石は、その写真を判断する立場の人に見てもらうこと。事務所のウェブサイトから応募する、地元のオープンオーディションに行く、あるいはGet Scoutedのようなサービスを通じて事務所にプロフィールを送る方法もあります。Get Scoutedでは世界中の事務所にプロフィールが共有されます。判断は各事務所がそれぞれ行うため、合格を約束できる人は誰もいません。
事務所に断られたり、返事がなかったりしたら?
一番多い反応は「無反応」ですが、それが必ずしも不合格を意味するわけではありません。事務所には応募が絶え間なく届き、興味があるときだけ連絡するところも少なくないのです。ある部門で見送られても、別の場所では合格になることもあります。ミラノのハイファッション事務所が見送った顔を、ロサンゼルスのコマーシャル事務所がひと月以内にブッキングする、ということも。タイミングの問題の場合もあります。去年の春にあなたと似たタイプと契約したばかりで、二人はいらない、というように。
本当に手応えがあると言えるのは、こんなときです。
- 事務所から追加の写真や動画、サイズを求められた。
- 事務所への来所やビデオ通話に誘われた。
- 「今回は見送りますが、また応募してください」でも、複数の事務所から返事があった。
ファッション系とコマーシャル系、いくつかの都市の幅広い事務所にきちんとしたデジタルを送り、2〜3か月たっても何の連絡もないなら、3つの点を見直しましょう。写真は本当にシンプルで、光がきれいに当たっているか。スタイリングやフィルターが入っていないか。狙っているジャンルは合っているか。そして、十分に時間をかけたか。顔は変わります。特に10代後半はなおさらです。半年後に再挑戦するのはごく普通のことで、未練がましいことではありません。
顔とは関係ないサインもある?
これはブッカー同士が、インタビューよりもよく口にする話です。似たルックスの二人のモデルが同じキャスティングに送られても、片方だけがずっと多く仕事を得る。その差はたいてい、小さなことに表れます。
- メッセージにはその日のうちに返信し、10分前には到着している。
- 「あご引いて、もう少し、今度は手の力を抜いて」といった指示に、動揺せずに応えられる。
- 一週間に何度「今回はイメージと違う」と言われても、次のキャスティングにはリラックスして臨める。
- フォトグラファーにも、衣装ラックを押すアシスタントにも、同じように礼儀正しく接する。
どれも生まれつきの才能ではありません。身につけられることで、初めての仕事を二度目につなげるのは、多くの場合こうした部分です。
ルックスは扉を開く。もう一度呼ばれるかどうかを決めるのは、一緒に仕事がしやすいかどうかだ。
もう遅い、という年齢はある?
ハイファッションやランウェイでは、10代後半から20代半ばで契約する新人がまだ多いものの、その幅は以前より広がっています。コマーシャルやクラシック部門では30代、40代、それ以上の人も契約しており、コマーシャルで安定して稼いでいる人の中には、自分が限界だと思っていた年齢をとうに過ぎてから始めた人もいます。16歳や17歳の場合は、事務所とのやりとりには必ず保護者が関わり、署名を求められた書類にはすべて目を通してもらってください。
どの年齢でも変わらないルールが一つあります。正規の事務所は、所属するのにお金を請求しません。登録料も、必須の撮影も、所属条件としての有料「モデルレッスン」もありません。事務所の収入は、あなたが仕事をしたときの手数料。だからこそ、選ぶ目が厳しいのです。まだ何の仕事もしていないうちからお金を求められたら、その場を離れましょう。
ブレザーの女の子はどうなったか。ブッカーは彼女に、試験が終わったらノーメイクで髪をまとめてまた来るように、と伝えました。たいていはそんなものです。合否の判定というより、次への指示。写真の準備ができたら、応募を始めて、自分では見えないことを事務所に教えてもらいましょう。
よくある質問
いわゆる美人タイプでなくてもモデルになれますか?+
なれます。事務所が求めているのは、写真映えして個性を感じさせる顔で、一般的な「美人」とは別物です。特にコマーシャルの仕事では、リアルで親しみやすい人が求められます。
モデルになるには身長は何cm必要ですか?+
ジャンルによります。ランウェイやハイファッション部門では、女性は約173〜183cm、男性は約180〜190cmを目安にするところが多いですが、コマーシャル、カーヴィー、フィットネス、パーツ、プチなどはずっと幅が広く、基準は事務所や市場によっても異なります。
スカウトや事務所にお金を払って、可能性を見てもらうべきですか?+
いいえ。正規の事務所は新人の審査を無料で行い、収入はあなたが仕事をしたときの手数料のみです。所属前に料金や撮影パッケージ、レッスン代を求めてくる相手は要注意です。
ニキビや傷跡、タトゥー、歯の矯正があってもモデルはできますか?+
多くの場合、できます。事務所はありのままの肌やパーツを見たいと考えていて、傷跡やタトゥー、そばかすのあるモデルを起用するクライアントもたくさんいます。肌荒れや矯正器具など一時的なものはタイミングに影響することはあっても、ずっと不利になることはほとんどありません。
事務所に再応募するまで、どのくらい待てばいいですか?+
半年ほどが目安です。背が伸びた、髪型を変えた、写真が良くなったなど、明らかな変化があればもっと早くても構いません。10代後半は顔が早く変わるので、16歳で見送られても17歳で声がかかることもあります。
事務所はフォロワー数を気にしますか?+
思っているほどではありません。一部のコマーシャルやブランドの仕事では役立つこともありますが、事務所がまず見るのはルックス、プロポーション、存在感です。フォロワーがごく少ない状態からスタートする新人もたくさんいます。